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2008-09-09(Tue) 編集
[読書ログ][物語][新潮社] アルベール・カミュ - ペスト (宮崎嶺雄訳 新潮文庫)
2008/03/10購入.2008/03/17読了.高校生ぐらいの時に異邦人を読んだのだが「面白くない!」と言う感想だった.僕の中でのカミュの評価は著しく下がった.
が,ペストは良かった.圧倒的な暴力として人を殺すペストが蔓延する状況において,人間がどう振る舞うのか?がメインテーマの作品.下記の,主人公である医師(リウー)と新聞記者のランベールとの会話が最高.
「君のいうとおりですよ,ランベール君,まったくそのとおりです.ですから,僕は,たとい何もののためにでも,君が今やろうとしていることから君を引きもどそうとは思いません.それは僕にも正しいこと,いいことだと思えるんです.しかし,それにしてもこれだけはぜひいっておきたいんですがね―今度のことは,ヒロイズムなどという問題じゃないんです.これは誠実さの問題なんです.こんな考え方はあるいは笑われるかもしれませんが,しかしペストと戦う唯一の方法は,誠実さということです」
「どういうことです,誠実さっていうのは?」と,急に真剣な顔つきになって,ランベールはいった.
「一般にはどういうことか知りませんがね.しかし,僕の場合には,つまり自分の職務を果たすことだと心得ています」
ペスト P.197
死を恐れないというヒロイズムではなく,誠実であるというヒロイズム.職務を誠実に果たすことで,世界と関わり合うというヒロイズム,と言うのは,サンテグジュペリの作品との繋がりを感じるなぁ.